通り過ぎただけの
いきなりですまんが、ちんちんが熱々だった頃のあの感じを僕らは絶対忘れちゃいけねえと思うんだ。
あとそんなに美味しくないハムカツがこの世で一番うめえってことを僕らは絶対忘れちゃいけねえと思うんだ。
みんな羨ましいくらい簡単に忘れていくから、僕らだけは忘れちゃいけねえんだ。
言語化できないくらい悔しくて訳も分からず大笑いしてしまったこと。
何かよくわからない喜びに満ち溢れていて訳も分からず泣いてしまったこと。
僕のことなんて忘れてしまっても良いからさ、そういうこと簡単に忘れちゃいけねえと思うんだ。
それで思い出したんだけど。
朝礼で校長先生が、多分スワヒリ語でモラルとやらを説いている。
そうしている間にも、我々生徒一同はバッタバッタと熱中症にやられていく。
恋の病にバッタバッタとやられていく。
勝手に地球を丸ごと妊娠した気になって、そのつわりにバッタバッタとやられていく。
我々は小市民に過ぎないにも関わらず、得体の知れない怪物にバッタバッタとやられていく。
その度に僕の心はどこか物悲しく、でもどこかギラギラと熱かった。
それがとてつもなくしんどかった。
学校に来なくなった君は、薬の副作用で丸々と太り、その光景を自宅の部屋で眺めている。
僕もそうすればよかった。
不謹慎で申し訳ないけれども、時々本気でそう思う。
どんどん人とちゃんと話ができなくなってくる。
どんどん人と向き合うのが嫌になっていく。
助けてほしいと本当に願っているのに、広告代理店はそれを「アオハルかよ。」と揶揄する。
ふざけんな。
世間てそんな簡単な構図でできていたんだっけ。
簡単な構図を複雑に捉えて迷子になった僕が悪いんだっけ。
4月3285日、日曜日、混沌記念日。
一旦煙草に火をつける。
ほんの少しばかりの良い人とうだるほどに沢山の嫌な人に囲まれて、僕a.k.a嫌な人間は、色んなことに折り合いをつけて、どっちかって言うと幸せそうな顔をして生きている。
でもみんな作り物みたいな幸せそうな顔で街を遊覧しているから、僕が相対的に不幸に見える。
これってもしかして平和なのか。
平和ってこういうことなのか。
油断してると怪物に一飲みにされそうな気がしておどおどしている今。
これって平和なのか。
熱烈に腹が減ったから、チェーン店のカツカレーを食べた。
僕を甘やかすような、出来合いの幸せのような、毒の味がした。
外には毒みたいな色の出来損ないの虹が、点と点を結んでいた。
自信はないけど、きっとこの世に平和、じゃないにしても夏が、訪れているんだと思う。
ところで君の部屋の窓から見た、朝礼中の校庭の景色はどんなんだった?